今回はペルーのアマゾン奥地、サンフランシスコ村で受けたアヤワスカの儀式の様子や世界の真実について書かせていただきました。

この夜は、私にとって一生忘れられない夜となりました…。
シピポ族のシャーマンとは
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アヤワスカの儀式を求めて!シャーマンが住むサン・フランシスコ村への道のり!!
※2018年4月の旅について記事にしました。 今回はペルーのプカルパから、シャーマンたちが住むと言われているサン・フランシスコ村への行き方・村の様子などについてご紹介させていただきます! ...
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前回の記事、シャーマンとの出会い編はこちらから。
アヤワスカの儀式体験をお話する前に、シピポ族のシャーマンについて簡単にお話させていただきます。
まず、シャーマンと聞くと神や精霊と交信をして予言、預言、祭儀、治癒などを行う呪術師が思い浮かぶかと思います。
ペルーにもそういったシャーマンたちが存在し、私たちが訪れたサンフランシスコ村はシピポ族のシャーマンたちが住む村として知られています。
シピポ族はプカルパに集中して住んでいる先住民で、アマゾンに生育している植物の効能について豊富な知識を持ち、植物療法の中心的な存在とも言われています。
その知識は先祖から代々継承され、西洋の医学者たちも彼らから学び、研究をしているほどだとか。
ちなみに私がお世話になった施設はスイピーノの施設ですが、スイピーノとはシャーマンの名前ではなく、グループ名のようなものだそうです。
スイは『神聖』、ピーノは『蜂鳥』を意味するそうです。
アヤワスカの儀式
アヤワスカについて
そもそもアヤワスカとは何なのか?
アヤワスカとは南米のアマゾン川流域に自生するツル科の植物のことを指します。
アヤワスカには強いデトックス作用と幻覚作用があり、その幻覚作用はLSDの何倍にもなると言われています。
また、アヤワスカは2008年にペルーの国家文化遺産として登録されました。
アヤワスカの儀式ではアヤワスカと他の植物を混ぜて煮込んだ液体を薬として使用します。
アヤワスカの儀式について
アヤワスカの儀式はセレモニーと呼ばれます。
アヤワスカを長時間煮込んで作った薬を飲み、シャーマンがイカロという歌を歌うことでセレモニーは進行します。
これは患者を治療するための医療行為であり、特に精神疾患、薬物依存症、アルコール依存症などに効果があると言われています。
南米ではアヤワスカを使った薬物依存症の更生施設もあるそうです。
通常セレモニーは夜から始まり、明け方近くまで、ひと晩かけて執り行われます。

ちなみにアヤワスカの儀式ではアヤワスカが持つその幻覚作用を通じてか、前世が見えたり、臨死体験をしたり、不思議な幻覚(ヴィジョン)を見たり、本当の自分に出会えたり…と不思議な体験をする方が多数いらっしゃるようです。
エル・カラファテでアヤワスカの儀式を受けたという日本人の方2名ほどに直接お話を聞くことができましたが、自分が宇宙まで行って地球を眺めていたり、目の前に突然、修道女がたくさん現れて手を自分の方に差し出してきたり…と不思議なヴィジョンを見たそうです。
注意事項
続いてセレモニーを受ける際の簡単な注意事項です。
セレモニーを受ける前は断食・断水をするとよいそうです。
アヤワスカには強いデトックス効果があり、服用すると嘔吐、下痢などの症状が出ます。
その際、胃袋の中に食物が入っていると大変苦しい思いをするからです。
また、アヤワスカはマンゴーなどウルシ科の植物と相性が悪いため、少なくともセレモニーの前日などは食べるのを避けましょう。
水に関しても、アヤワスカの効果が薄まってしまうためセレモニー前日か、当日はあまり摂取しない方がよいと聞きました。
しかし、断食にしろ断水にしろ、体力がなくなるほどやるべきではないかと思います。
特に暑い季節に断水をして水分不足で体調でも崩したらアヤワスカどころじゃなくなってしまいます。
また、シャーマン選びに関しても、しっかりと見極めないと法外な金額をぼったくってくるシャーマンや黒魔術をかけてくるシャーマンもいるそうです。
自分がフィーリングが合うシャーマンがよいとも聞きます。
アヤワスカはマンゴーなどウルシ科の植物と相性が悪いのでセレモニーを受ける前は摂取を控える
セレモニーを受ける前は軽く断食・断水する
この世界の真実とは
そもそも、なぜ私がアマゾンの奥地までアヤワスカの儀式を受けに行くことになったのか?
その大きな目的は、『この世界の真実を知ること』にありました。
この世界の真実とは?
そもそもこの世界はどのようにして成り立っているのでしょう?
この世界がどのように成り立っているかについて、世界的に有名な実業家イーロン・マスク氏や、一部のシリコンバレーの億万長者たちは「我々は既に仮想現実の世界に住んでいる / 世界が仮想空間でない確率は数十億分の1である」という説を唱えています。
私たちはメタバースのような実体のない仮想空間に生きているという主張です。
また、オックスフォード大学の哲学教授であるニック・ボストロム氏も、
「現在の人類はコンピュータ・シミュレーションの中に生きている可能性がある」
というシミュレーション仮説を2003年に発表した論文の中で記しています。
さらに、投資銀行であるバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは顧客に向けた経済予測レポートで、
「私たちがコンピュータ・シミュレーション(仮想現実)の中に生きている可能性は、20%~50%である」と発表しています。
ちなみに投資銀行のレポートというのはある程度の裏付けがあることしか発表されません。
世界トップクラスの実業家や哲学者、金融機関の人たちが、私たちは映画「マトリックス」のような実体のない仮想現実の世界に生きている可能性があるという考えを持っているということです。
ちなみにイーロン・マスク氏や一部のシリコンバレーの億万長者たちは巨額の私財を投資して科学者たちに、この仮想現実の世界から抜け出す方法を研究してもらっているのだとか。
さらにこのような考え方は古代哲学や仏教などの宗教の中にも見られます。
古代ギリシャの哲学者プラトンの「イデア論(洞窟の比喩)」や、仏教の般若心経にある「色即是空」、「空即是色」
などがそれに当たります。
ブッダは何千年も前に、この世界が仮想現実のような実体のない世界だということに既に気づいていたというから驚きです。
ちなみにその気づきを『悟りを開く』と表現します。

量子力学
また、量子力学という科学の世界でもそれを証明するかのような実験が行われています。
量子力学について、一から説明するととても長くなってしまうので割愛しますが、こちらの動画をご覧いただくとわかりやすいかと思います。
簡単に言うと、この世界のありとあらゆるすべてを構成する最小単位のモノを素粒子と言います。
その素粒子は観測されていない状態では波のような実態のない状態、観測された状態では物質化した粒の状態で存在します。
さらに素粒子は振動しており、その振動数のことを波動と呼びます。
つまり、私たち自身を含めこの世に存在するすべてのモノは素粒子の振動、エネルギーに過ぎないということです。
まるでゲームの中の仮想現実のように、観測されない状態であれば実態を伴わない波の状態で、誰かに観測されることによって実態を伴う物質に変化していると言えるのです。
ちなみにこの素粒子の振動数(波動)は共鳴する性質があります。
例えば私たちの振動数(波動)が高い状態であれば、波動が高いものと共鳴してそれらが自分の周りで現実化(物質化)します。
逆に波動が低い状態であれば同じように波動が低いものと共鳴して、それが現実化します。
世間ではこれを引き寄せの法則と呼びます。
このように量子力学的な視点から見ても、この世界は実態を伴わないまるで仮想現実のような世界だと言えるのです。
シピポ族の伝説
それらの話がアヤワスカとどう関係しているのか?
今度はアヤワスカの儀式を行うシャーマン、シピポ族の神話について簡単にお話させていただきます。
シピポ族の創世神話によれば、この世界は銀河に誕生した天の川、母なるアナコンダが自分の肌に描かれたクヌーを歌ったときに始まったとされています。
クヌーとは、「振動を生む宇宙エネルギーの構成図」で、シピポ族はすべての生物が独自のクヌーを持つと考えています。
そして、そのクヌーを見るには母なるアナコンダのパワーそのものであるアヤワスカなどの植物を摂取する必要があるとされているのです。
ちなみにクヌーはロカなどに描かれた、この幾何学模様のことです。
サンフランシスコ村の多くの建物に描かれています。
さらにアヤワスカを受けた方の体験談で、幾何学模様の幻覚が見えるということも多数報告されています。
儀式の中でシャーマンはアヤワスカを摂取し、クヌーに触れます。
そして、患者の中にある病の原因となるクヌーの不均衡な振動のパターンやほつれを診ます。
病の原因を特定し、病を治癒する振動のパターンをイカロという治療歌にし、その振動で患者を治療するのです。
すべては振動であり、その振動こそがこの世界の真実そのものなのではないでしょうか。
アヤワスカの儀式開始
アヤワスカを飲む
いよいよアヤワスカの儀式を受けるときがきました。
17:00、私としのぶさんは儀式をするロカという建物に移動して儀式が始まるのを待ちました。
断食をしてお腹が空いた私たちは食べ物の話ばかりしていました。
「そんなに豪華なご飯じゃなくていいからさ、セブンイレブンの唐揚げ弁当とか食べたいよね。」
と呑気な話で盛り上がります。
この後、とんでもない地獄がやってくることも知らずに…。
日が沈み、19:00頃になるとロカに人が集まりだしました。
ロカの中はロウソクの灯りが灯り、なんだか幻想的な雰囲気です。
21:00、数名のシャーマンと共にいよいよ儀式が始まります。
シャーマンが参加者の元へアヤワスカを運びます。
私もショットグラスに入れられたアヤワスカを渡されましたが怖くてなかなか飲むことができません。
まるで、バンジージャンプを飛ぶ直前のような心境です。
これを飲んだら一体私はどうなってしまうんだろう…。
私から少し離れた隣の場所で既にアヤワスカを飲んだらしいしのぶさんが
「めちゃくちゃまずいけど飲めなくもない味だよ!」
と言っています。
私も勇気を出して飲みました。
めちゃくちゃまずかったですが、意外と飲めました。
まさにエスプレッソと醤油を混ぜて腐らせたような味です。
アヤワスカを飲んだあとは用意された小さな布団に横になりました。
ロウソクの灯りも消され、ロカの中は漆黒の闇に包まれます。
これから何が起こるんだろう…
そう思いながら、気づくと私は眠りに落ちていました。
イカロが始まる
それから1時間後、私の意識は奇妙な音によって現実世界に引き戻されます。
「えっ…?」
恐怖で体が硬直します。
シャーマンがイカロを歌い始めたのです。
それは声というより異質な音のようであり、歌というよりまるで呪文のようでした。
今まで聴いたこともないようなその旋律に、私は恐怖を覚えます。
不気味でただ、怖いという感情が湧き上がります。
私は少し混乱しました。
なぜ、こんなにも怖いんだろう?と。
今までこんな恐怖心を感じたことがあっただろうか?
まるで、恐怖というエネルギーがどこかから沸き起こり、私の周りで停滞しているようでした。
アヤワスカを飲み、イカロを聴いたら幻覚が見えるはずです。
どんな幻覚が見えるのか?
緊張しながら私はそのときを待ちました。
しかし…
一向に変化はありません。
私は少し焦りを覚えました。
アヤワスカを飲んで2時間、シャーマンがイカロを歌いだしてから1時間が経過した23:00のことです。
隣にいたしのぶさんが苦しみ出します。
「助けて…」
と言い、もがいているようです。
そのときの私はしのぶさんのことが心配というより、
『しのぶさんはちゃんとアヤワスカが効いているのになぜ私には効かないんだろう?』
という焦りを感じていました。
しのぶさんが正常で私が異常という心境でした。
しかし、しのぶさんが言い放った一言で私は身体が凍りつきます。
「のりちゃん…!!助けて!!……皮膚が……溶けてる!!!」
…えっ!?
「しのぶさん!!!」
私は急いで体を起こし、携帯のライトを頼りにしのぶさんの元に駆け寄りました。
しのぶさんの腕を掴み、急いで服を捲って携帯のライトを当てて腕の皮膚を確認します。
腕や顔、見えている皮膚を確認しますが皮膚はどこも溶けていません。
幻覚を見ているんだ…。
しのぶさんは手を上につき出し、まるで溺れているかのように苦しんでいました。
私はどうすればいいのかわからず、ただ、しのぶさんの横で呆然としていました。
その時です。
「大丈夫ですか!?お友達、苦しんでいますけど大丈夫ですか!?」
突然、知らない日本人の方たち2人が私の目の前に現れました。
このとき初めて、セレモニーに私たち以外に日本人の参加者がいたのだと知ります。
男性はけんじさん、女性はうららさんで共に36歳。
新婚旅行がてら1か月ほどスイピーノの施設に滞在しているとのことです。
けんじさんは10年前にもアヤワスカを受けたことがあり、私たちよりアヤワスカの知識を持っているようでした。
そして、うららさんは体調が優れないということでこの日はアヤワスカを飲んでおらず、苦しんでいるしのぶさんを介抱してくれます。
「のりちゃん…!!助けて…!!」
しのぶさんが何度も何度も私の名前を呼びます。
その度に私は返事をし、
「ここにいます!」
と伝えました。
後で聞いた話ですが、このとき、しのぶさんは皮膚がなくなる感じがし、憎悪の波に飲まれて自分が消えていくような感覚になっていたそうです。
周りにいた人たちが怖くて、私の名前を呼び、私の返事や私の存在が現実世界へ引き戻してくれたのだとか。
この話を聞いたとき、プンタ・アレーナスで出会ったヴィンセントの言葉を思い出しました。
ヴィンセントは私が「ペルーのアマゾンへ行く」と言ったとき、
『まさか、アヤワスカじゃないだろうな!?ひとりで行くのか!?』
と心配していました。
友人と一緒に行くと伝えると、
『そうか…。それなら大丈夫だ。』
と安心していました。
ヴィンセントが心配をしていたのはこういう状況が起こりうるからだったのかもしれません。
私の方はと言えば、全く効果が表れません。
驚くほど変化がなく、焦りを感じます。
シャーマンは参加者たちの元を順に訪れてイカロを歌っています。
私の目の前にもシャーマンがやってきました。
『……メディコ カン メディコ~…』
シピポ語で歌われるその歌詞の意味はわからないはずですが、
メディコって薬のことかな?私の身体の悪い部分を直そうとしてくれているのかな?
と感じました。
漆黒の闇の中でイカロを歌うシャーマンの姿を捉えようと、私はじっとシャーマンの方を見つめます。
シャーマンはタバコのようなものを吸い、薬草のような匂いがするその煙を私に吹きかけてきました。
アヤワスカが私に効いていないのを悟ってか、もう一杯アヤワスカを勧めてきます。
でも、私は怖くてそれを飲むことができませんでした。
しのぶさんは相変わらず苦しみ、うららさんとけんじさんが介抱しています。
そのとき、突然、座っていた私の背中に何かがぶつかり、私は悲鳴をあげました。
どうやらロカの中を飛び回っていたコウモリが私の背中にぶつかったようです。
「どうした!?大丈夫か!?」
とけんじさんが声をかけてくれました。
「何かが…背中にぶつかって…!!!」
大丈夫だ、コウモリだ。とけんじさんは私をなだめますが、また私の中に恐怖心が沸き起こり軽いパニック状態になります。
コウモリは超音波を発し、その反響音を感知して物にぶつからずに飛んでいるはずです。
何で私にぶつかってきたんだろう…。
またぶつかってきたらどうしよう。
そんなことを考えていたせいか、しばらくすると再びコウモリが私の背中にぶつかってきました。
キャー!と悲鳴をあげ、またパニックになります。
そんな私の様子にシャーマンたちがクスクスと笑いをこぼしました。
儀式中に悲鳴を上げて騒いだのだから怒られるのかと思った私は、そのシャーマンたちの反応を意外だなと感じます。
私は与えられた布団の上に仰向けになり天井を眺めました。
頭の中はパニックでした。
コウモリが物にぶつかることはあるそうですが、このときの私は、
『果たして今、本当にここに自分が存在しているのか?』
と自分自身の存在を信じられなくなっていたのです。
この世界の全てが素粒子の振動と五感が創り出した幻であるというのなら、私が今感じている周りのものは一体なんなのだろう…。
アヤワスカを摂取して、そこに存在しないはずの幻覚が見えるように、今いるこの世界も所詮脳へ送られた電子信号が創り出した幻の世界でしかない。
いや、今私が五感で感じているこの世界はそもそもアヤワスカによる幻覚が創り出した世界かもしれない。
もう何が真実の世界かわからない…。
天井には数匹の蛍がクリスマスツリーのイルミネーションのようにチカチカと強い光を放っていました。
なぜ、今まで私は私自身とこの世界の存在を信じていられたのだろう…。
そんな風にぼんやりと考えていました。
そのうち眠気が私を襲ってきます。
ここで眠ってしまったらアヤワスカの効果がなくなってしまうと思い、なんとか意識を保とうとします。
心なしか、少し気持ち悪い気がしました。
「おい、あんたの友達、相当やべえな…。」
私の方へやって来たけんじさんが言います。
「あいつもマジでヤバいな…。」
あいつ?
その瞬間、また大きな恐怖心が私を支配します。
「あいつ!?あいつって誰ですか!!??」
焦ったようにけんじさんに問いかけると、
「欧米人の男性がいただろ?さっきからずっとウロウロ歩いてる。」
と教えてくれました。
そういえば欧米人の男性が参加していたなと思い、私は落ち着きを取り戻しました。
少し気を抜くと、私はすぐに恐怖の感情というエネルギーと同調してしまうようでした。
そのとき、ふと思い出しました。
例えば今聞こえる周りの音が自分のものではないように、この恐怖心という感情すらも自分のものではなく、ただのエネルギーを私が感じているに過ぎないのだと。
嘔吐と混乱
しばらく座っていると心なしか気分が悪くなってきました。
最初は深夜に起きているので疲れたのかと思いましたが気持ち悪さは増すばかりです。
「なんだか、気持ち悪い。」
そうけんじさんに伝えると、けんじさんの手が私の背中に伸びてきました。
温かいけんじさんの手で背中をさすってもらった瞬間、私の口から勢いよく水が飛び出します。
グエェェェェエ…!!!
私はものすごい勢いで嘔吐しました。
けんじさんは、「そうだ、吐け!全部吐くんだ」と言い、私の背中をさすります。
私はバケツに思い切り吐きました。
この瞬間から嘔吐が止まらなくなります。
そして今まで味わったことがないような気持ち悪さに襲われます。
気持ち悪くて苦しくて、気持ち悪さを鎮めようと布団に寝ても全く鎮まらず、嘔吐が止まらないため結局座った体勢で嘔吐し続けます。
けんじさんは洋酒の瓶のようなものを取り出し、中に入った液体を手に少し乗せるとそれを私に吹きかけてきました。
甘い花のような香りが顔に吹きかかります。
その香りを嗅いだ瞬間、また激しい嘔吐をします。
よい香りのはずなのに、その香りを嗅ぐとものすごく気持ち悪くなるのです。
『嫌だ…!!!止めてください!!』
私は十字架を突きつけられた吸血鬼のように苦しみ、逃げようとしました。
しかし、そう訴えてもけんじさんは決して止めてくれません。
その香りはまるで不協和音のように不快なものでした。
目が飛び出してしまうのではないかと思うほど激しく嘔吐し、苦しさに涙が出てきて、顔は涙と鼻水と吐き出したアヤワスカでグチャグチャです。
まるで私の身体の中でアヤワスカが暴れまわっているかのような苦しさでした。
「あんたも相当ヤバイな…。どこか病気なのか?なぜ、アヤワスカを受けに来た?」
けんじさんが私に問いかけます。
果たしてけんじさんが私が見たい真実の世界について理解してくれるのかわかりませんでしたが、
私は旅に出る前に自律神経系や体調を大きく崩したこと、真実の世界を見たくてアヤワスカを受けにきたことなどを話しました。
けんじさんは少し考えた後、今日は儀式に参加していないが日本人シャーマンのみつさんという方がこの施設にいるので明日連れてくると約束してくれました。
「なあ、あんたもあんたの友だちも相当ヤバイな。いつまでここにいるんだ?1か月くらいここにいることはできないか?」
そんな風に真剣にけんじさんに問いかけられました。
『1か月も…?……………無理ですよ。怖いんです……。なんでこんなに怖いのかわからないけど…。アヤワスカが怖いんです。』
また恐怖心がわき上がり、私は反射的にそう答えます。
『怖い………?』
けんじさんは真剣な眼差しでじっと私を見つめた後、口を開きました。
『そうだ、アヤワスカは怖い。』
その答えにハッとさせられます。
『でもここは環境もすごく整っている。アヤワスカを受けなくてもいいから1か月間ここでちゃんとした食事を摂って過ごせばだいぶ変わるはずだ。
そうすればあんたの身体も友達の身体も良くなる。
…………俺は…これから日本でどれだけ辛いことがあったとしても、ここでの生活を思い出せば頑張ることができる。
もしも、自分の人生にここでの生活がなかったら俺の人生ってなんだったんだろう……意味がないな…と思える程ここでの生活は自分にとって価値があるんだ…!!』
真剣にまくし立てるように言い放ったそのけんじさんのその言葉を聞き、私は絶句しました。
アヤワスカに心を奪われている…。
一体、アヤワスカの何がそこまでさせるのか。
私は既にアフリカ行きの航空券を手配していてキャンセルするのが難しい状況でしたし、しのぶさんも仕事の関係で滞在延長は難しそうでした。
けんじさんにそれらのことを伝えてなんとか断りました。
携帯電話の時計を見ると時刻は3:00を指しています。
全く時間の感覚がありませんでした。
儀式の終わりと夜明け
それからしのぶさんは苦しみ続け、私も体力の限界まで吐き続けました。
もう、夜は明けないのではないかとすら思っていましたが気づくと時刻は6:30になっていました。
太陽が昇り、ロカの中に朝の光が入り込んできます。
他の参加者たちは各々ロカを退出していきました。
気づけばけんじさんとうららさんの姿もありません。
私は少し吐き気がするものの、だいぶ身体は楽になっていました。
しのぶさんは隣で横になり、落ち着きを取り戻しています。
バケツを見ると、中には私が吐いた茶色の液体でいっぱいでした。
結局私は何も見ることができませんでした。
しばらくその場でボーッと座っていると、けんじさんがひとりの男性を連れてロカの中に戻ってきました。
タバコのパイプを持った、目が大きくて痩せ気味の男性。
シャーマンのみつさんでした。
私の目の前に2人が座ります。
こうして、私とシャーマンのみつさんとの対談が始まったのです。
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