今回はギリシャとブルガリア国境近くの街エディルネについてご紹介させていただきます。
かつてオスマン帝国の首都でもあった歴史的で美しい街です。

イスタンブールからエディルネへ移動
イスタンブールオトガルからエディルネオトガルへ
イスタンブールからエディルネへは長距離バスを利用して行くことができます。
片道約2時間半~3時間、料金は100リラ(約1,300円)前後。
本数も多いので安心です。

バスの乗り場はヨーロッパサイドの Esenler Otogarı になります。
私はチケットを事前に手配しておいたので、当日は指定された番号の乗り場へと向かいました。
10:50にバスに乗り込み、11:00に出発です。
注意ポイント
Esenler Otogarı はとても広く、チケットカウンターやバス乗り場を探すのに少し時間が必要な場合もあるので一度も行かれたことがない方は少し時間に余裕を持って到着されることをお勧めします。
バスは順調に走り続け、13:53にエディルネのオトガルに到着しました。
エディルネオトガルからエディルネ市街へ
エディルネのオトガルから市街へはミニバスを利用して移動することができます。
到着すると係員の方が親切にもミニバス乗り場へと案内してくれました。
こちらのミニバスで市街まで行くことができるようです。
乗車賃の3リラ(約39円)を支払い、運転手に行き先を告げて乗り込みます。
近くにいた乗客の男性が、「僕たちも同じ場所で降りるから降りるときに知らせるね!」と言って助けてくれました。
トルコの方々は本当に親切です。
エディルネとは
エディルネとは、かつてオスマン帝国時代に首都がおかれた歴史ある街です。
また、市街中心部からギリシャの国境まで5km、ブルガリアの国境まで10kmという国境の街でもあります。
先史時代から人類が居住していたとされており、紀元前2世紀にローマに征服されました。
その後もさまざまな帝国の支配を受け、19世紀にはロシアやブルガリアに占領されたものの第二次バルカン戦争ではオスマン帝国軍が奪還。
自然に囲まれた美しい場所でもあったことから歴代のオスマン帝国の君主に愛された場所でもあるそうです。
エディルネのここが見どころ
- 世界遺産に登録されたイスラム建築最高峰セミリエ・モスク
- 医学博物館でもあるバヤズィト2世の複合施設
- ホテルやカフェレストランとしての役割も果たすミマール・シナン作のキャラバンサライ
- 12個のアーチが美しいメリック川橋
- トルコ最大級、ヨーロッパで3番目に大きいエディルネ・ブユック・シナゴーグ
エディルネ観光
セリミエ・モスク
まず、エディルネの観光スポットをご紹介させていただきます。
エディルネには世界遺産にも登録され、イスラム建築最高峰の1つとも言われるセミリエ・モスクが存在します。
1568年から1574年の約7年間に渡って建設された、建築家のミマール・シナンの最高作とも言われエディルネのシンボルでもあります。
8本の柱があり、八角形のドームを支える独自の建築様式が取り入れられています。
内部の広さと壮麗さに見惚れてしまいました。
1913年、ブルガリアが侵攻してきた際に砲弾が当たりましたが、モスクが大きくて頑丈だったため無事だったというエピソードもあるのだとか。
また、ドームの大きさはイスタンブールのアヤソフィアのドームの大きさとほぼ同じだそうです。
天井の模様がとても美しいです。
朝はほとんど人がおらず、とても神聖な雰囲気が漂っていました。
外庭も綺麗に整備されています。
中庭には大理石で作られた16角形の美しい噴水があります。
柱廊も芸術的でしばらく時を忘れて眺めていました。
エディルネ観光では絶対に外すことのできない場所です。
エスキ・モスク
こちらはセリミエ・モスクの近くにあるエスキ・モスクです。
1414年に建設されたエディルネ最古のモスクです。
内部に入って驚いたのは至る所に見られるカリグラフィー。
なんだかとてもエキゾチックです。
天井の模様も、まるで宇宙を表しているかのように美しいです。
こちらのモスクも朝の時間帯だったためか独り占めで観光できました。
大きなモスクではありませんが壁に描かれた模様とカリグラフィーが神秘的で美しい、一見の価値があるモスクです。
セリミエ・モスクに行かれた際にぜひ併せて訪問をしてみてください。
Ucセレフェリモスク
こちらも同じくセミリエ・モスクの近くに建っているUcセレフェリモスク。
1438年から1447年の間に建設されました。
中庭には水洗い場があり、信者はここで手足を清めてからモスクに入ります。
ミナレットと3つのバルコニーが備え付けられたモスクです。
柱廊の天井に描かれた模様がとても印象的でした。
キャラバンサライ
エディルネの街には16世紀に建設されたキャラバンサライ(隊商宿)が存在します。
こちらも建築家ミマール・シナンの作品です。
修復工事が行われ、現在はホテルやカフェとして機能しているようです。
新型コロナウイルスの影響か閉鎖されて中に入ることはできませんでしたが、歴史的でとても美しい中庭があるようなのでそんな場所でコーヒーを楽しむのもいいですね。
メリック川橋
エディルネの街の南側にはメリック川橋がかかっています。
12個のアーチで支えられた石造りの美しい橋です。
1843年、次代のスルタン・アブドゥルメジト1世のときに建設された橋です。
芸術性のある美しい橋ですので、お時間のある方は少し遠くからその姿を眺めてみるのもいいかと思います。
私も少し離れた場所から眺めてみたり橋の上を歩いて楽しみました。
バヤズィト2世の複合施設
また、街から少し外れた場所にはオスマン帝国の建築家ミマールハイルディンによって建設されたバヤズィト2世の複合施設があります。
1488年にスルタンバヤズィト2世のために建設されました。
街から歩いていけない距離ではないですし、周辺の景色がとても穏やかで美しいので足を運ぶ価値はあります。
この複合施設は1997年に医学と健康問題全般の歴史を専門とする博物館に改築されました。
医学校は音楽や水の音、花の香りなどの自然を利用した精神療法に特徴があったことで知られているそうです。
また、2016年にトルコの世界遺産の暫定リストに登録されました。
モスクも併設されているので足を運んでみてください。
スルタンバヤズィト2世は信仰深く敬虔なムスリムだったそうです。
複合施設の近くから街の方に目をやるとセミリエ・モスクなどの姿を確認することができ、とても美しい風景が広がっています。
エディルネ・ブユック・シナゴーグ
20万人以上のユダヤ人が祈りの場所を必要とし、当時のオスマン帝国のスルタン・アブドゥルハミト2世に許可をもらい建設されたと言われるシナゴーグです。
1,200人も収容できる大きなシナゴーグでヨーロッパで3番目、トルコで最も大きなシナゴーグです。
2015年に改装されたばかりだそうです。
ちなみにこちらの写真は裏側から撮影した写真です。
閉鎖されていて入場できないなと諦めて帰りましたが、単純に裏口から入ろうとしていたからかもしれません。
要するに入り口を間違えました。

クルド人の家でホームステイ体験
今回エディルネに遊びに来たのは約2年前にセルビアで出会った友人、ムラトに再会するためでもありました。
姉妹もいて女性が多い家族構成だからうちに泊まりにくればいいよと声をかけていただき、遊びに行くことになりました。
ちなみに私はムラトのことをずっとトルコ人だと思っていましたが、ムラトはクルド人でした。
クルド人とは
クルド人とは『国を持たない世界最大の民族』と言われており現在のトルコ、イラン、イラク、シリアの4か国の地域にまたがり居住している民族です。
人口は約三千万人と言われていますが未だにクルド人国家、クルディスタンの樹立は叶わない状況となっています。
非常に戦闘能力の高い民族であることから過激派組織ISの討伐で活躍しており、その名をニュースなどで聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
トルコではクルド人たちはクルド語を禁止されるなどの弾圧を長年にわたって受けており、激しい分離独立運動とトルコ軍との衝突が度々見られました。
友人らの故郷は東トルコのマルディン。私も以前訪問しましたが、とても美しい街でした。クルディスタンはイランのサナンダージやパランガルを訪問しました。クルド人もイラン人同様ホスピタリティが高く、とても感動した思い出があります☺️#海外旅行#海外ノマド#フリーランス#クルディスタン pic.twitter.com/sY12tnO6a2
— Noriko海外ノマド@ウクライナ🇺🇦 (@Present_noriko) May 29, 2021
ホームステイ体験
エディルネオトガルからミニバスに乗り、ムラトに指定されたバスストップで降車しました。
この日、ムラトは仕事とのことだったのでムラトの妹さんが迎えに来てくれました。
家にお邪魔し、お部屋に案内されます。
こちらが私に用意されたお部屋。
清潔でスッキリとしたお部屋です。
家にはいくつもの部屋があり広くて驚きました。
その後庭でお茶をしてゆっくりと過ごします。
大学生である妹のハザールは英語をほとんど話さないようでしたが、とても親切で人懐っこい性格なのか翻訳機を使ってたくさんおしゃべりをしてくれました。
その時に彼らがクルド人であるということを知りました。
薔薇が咲いていてとても美しいお庭です。
こんな風にのんびりした時間を過ごすのもいいですよね。
さらに昼食の準備までしてくれました。
お父さんがレストランで働いているとのことで、お父さんの作ったターキッシュピザを手配してくれました。
写真はアイランというヨーグルトジュースを用意してくれているところです。
ターキッシュピザが届き、ハザールと一緒に食べます。
具がたっぷり乗っていてとても美味しかったです。
その後、近所に住む親せきの方の家にお邪魔することになりました。
親戚の方が日本人である私に興味があるとのことです。
どんな方たちなんだろうとドキドキしながらハザールと一緒に歩いて向かいます。
親戚の方の家の近くに到着しました。
そこに梅の木があり、ハザールがその梅を摘み始めました。
今回トルコに来て初めて食べましたが、これは梅の実だそうで少し酸っぱいですが美味しいです。
スーパーマーケットで購入しておやつとして食べていましたが、最初は何のフルーツか全くわからずに食べていました。
この辺りは草花が茂り、レンガでできたちょっといびつな感じの家が建ち並んでいてまさに私好みの風景が広がっていました。
そしてこちらがハザールとその親戚の方々です。
写真がブレてしまいましたが、可愛らしい子供たちもいて頑張って日本語をしゃべってくれたり、すごくなついてくれて楽しい時間を過ごすことができました。
さらに、なんと夕食までいただきました。
少し前に昼食をとったばかりでお腹いっぱいでしたが、このドルマという料理がとても美味しくて完食。
チキンライスを葡萄の葉で包んだような料理で日本人の口にとてもよく合います。
私が彼らの故郷であるマルディンを訪問したときの話をしたり、彼らの文化のことなど色んな話を聞くことができ、とても充実した時間を過ごすことができました。
家に帰り、しばらくするとママが夜のデザートとチャイを用意してくれました。
お父さんも帰宅されていたのでリビングでみんなで団らんします。
ムラトから「まだ仕事が終わらないんだけど、お腹空いたら俺の家族に遠慮なく言ってね!」というようなメールが届いていました。
しかし、ここへ来たときからずっとおもてなしをされっぱなしで私のお腹は常にパンパンです。
トルコ人もクルド人も本当にホスピタリティが高いです。
ムラトのお母さんも「私たちはお客様をもてなす文化があります。それが私たちの喜びです!」とおっしゃってくれてとても優しいお母さんでした。
可愛らしい猫も3匹いてすごくにぎやかな家族です。
その日は移動の疲れもあったのでベッドに入りすぐに眠ってしまいました。
翌朝、目が覚めると朝食が用意されておりお父さん、お母さん、3人の姉妹たちと一緒に朝食をとりました。
種類も豊富で豪華な朝食です。
こちらはクルド風の餃子。
モチモチしていてとても美味しいです。
そんな風に朝食をとっているとムラトが現れました。
久しぶりの再会を喜び、おしゃべりに夢中になります。
ムラトは数年間ドバイで働いていましたが、新型コロナウイルスの影響で仕事がなくなり実家に帰ってきたということでした。
今はレストランで仕事をしているけど、給料も下がってしまったしとても忙しいと話していました。
今日もまた仕事に行かないといけないし、一緒に過ごす時間がなくて申し訳ないと言っていましたが私が突然訪問してしまったので仕方ありません。
新型コロナウイルスの影響はいろんなところで出ているのだなと、少し胸が痛くなりました。
その後、私はまだ街の観光をしていなかったので観光に出かけることにしました。
ムラトは仕事へ行ってしまうとのことだったので、別れの挨拶をします。
「Noriko、ここはもうNorikoの家でもあるよ。いつでも、好きなときに帰っておいで!」
そんな風に言われてなんだか胸が温かくなります。
『日本に遊びに来るときは教えてね!もしくは世界のどこかでも会おうよ!』
そう言ってお別れをしました。
観光から帰ってくると、お母さんが昼食の支度をしていました。
トルコのご飯って少し塩味がして美味しいのですが、バターとかだし汁みたいなものとか入れて炊いているんだなぁと初めて知りました。
マントゥという餃子やチキンライス、キュウリのスープなどが出来上がります。
それをハザールたちと一緒に食べました。
言うまでもなく、とても美味ししいです。
お母さんはラマダンで断食をしていると言って食事をとることはしていませんでした。
食後にいただいたターキッシュコーヒーとチャイ。
その日、私は夕方のバスに乗ってイスタンブールに戻る予定でした。
ムラトもムラトの家族も「本当に戻っちゃうの!?もっとゆっくりしていけばいいのに!!」と言ってくれましたが長居するのも悪い気がしましたし、既に帰りのバスチケットを手配していたので帰ることにしました。
短い滞在期間でしたが、親戚の方を含めみんなすごく親切にしてくれてやっぱり別れはさみしかったです。
ママが「これで手を拭きなさい!」って新品のキッチンペーパーをくれました。
なんで?と思いましたが、私に何か手土産を持たせないといけないと思ったのかもしれません。
お母さんとお別れをするとき、ギュッとハグをしてくれ「ここはあなたの家でもあるのよ。いつでも戻って来なさい!」と、真剣な顔で言われました。
その日は大雨が降っていましたが玄関までお見送りに来てくれて、タクシーに乗り込み私の姿が見えなくなるまでずっと手を振ってくれていました。
その姿を見ていたらなんだか涙が出そうになります。
ハザールが教えてくれました。
クルド人は家族や親族の繋がりをとても大切にするんだって。
私には実家には両親がいるけど、現在家がなくパートナーもいない。
でも、自分の家族や帰る場所を持つことは1つの幸せでもあるのかなと感じさせられました。
また、いつの日か彼らと再会する日が来ることを願います。
行き方・料金
イスタンブールオトガルからエディルネオトガルへ
所要時間:片道約3時間~
時刻表:出発11:00-到着14:00
料金:片道100TRY~(約1,300円)
【乗車場所】Esenler Otogarı
【降車場所】Edirne Birlik
エディルネオトガルからエディルネ市街へ
所要時間:20分~
料金:片道3TRY~(約39円)